遺産(相続財産)共有化への対策として、「家族信託」はとても有効で効果的な対策となります。
民法では、“遺留分”という権利がとても強く守られており、財産の所有者が、自分が持っている財産を相続人のうちの誰かに相続させたくないと考えていても、一定割合の財産が“遺留分”として一定の家族や親族(遺留分権利者)の手に渡ります。
例えば、相続人のうち子のBさんには一切財産を渡さず、同じく相続人である子のAさんに全てを相続させるという内容の遺言を残しても、Bさんが遺留分減殺請求権を行使すれば、相続される財産のうち一定割合はBさんの手に渡ります。仮に、その財産の中に不動産が含まれていると、Bさんが遺留分減殺請求権を行使したときには、この不動産はAさんとBさんの共有となってしまいます。
不動産が共有になると、相続した不動産の全部を処分したり、他人に売却したりする場合、Aさんの判断のみではこれを実行できず、Bさんの協力が不可欠になります。もし、既にAさんがその不動産を自宅として利用していこうと考えた場合、Bさんに対してはBさんの持分に応じた償還金を支払う必要があります。
こうしたことから、遺産(相続財産)が共有となっている場合、相続人それぞれの事情から遺産に対する意見・考えが相違し、これが相続人間の紛争の火種に発展することが多いのです。
このような相続人間の紛争の火種を元から絶つためには、「家族信託」の活用が、とても有効で、効果的な対策となります。「家族信託」であれば、財産の所有者(被相続人)の生存中に、亡くなった後の財産の管理と処分を、家族のうちで最も信頼できる人に任せることができます。そのため、紛争の火種になりそうなケースを想定し、そのような火種が起きないような対策を講じて、それを契約の条件としておくことで、紛争の火種を回避することが可能となります。
そして、この「家族信託」は、契約の内容次第で、いかような制度設計ができるため、将来の紛争の火種となりえる様々なケースに備えることができるのです。